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062:夜の神社

第六十一話:夜の神社
 
語り手:雑賀千住

 
 
えーっと、ついこないだの話なんっすけど。
俺、肝試しに行ったんすよ。他にも何人かいたんすけどね。
行ったのは、どっかの神社だったっす。あんまり有名なとこじゃないっすけどね。別に心霊スポットでも何でもなかったし。

確か深夜2時ごろだったっすかねえ。
石段を上がって鳥居をくぐって…そうそう、その神社の周りは林になってたんすよ。
森って言ったほうがいいんすかねえ。いや、その差はよくわからないっすけど。
そこが昼間でも鬱蒼とした所なんすけど、夜中だとさらに真っ暗で気味悪いんすよねえ。鳥か何かの鳴き声も気持ち悪くって。
ああ、でも不思議と虫の声はしなかったっすね。
その林の中を、何人か固まって歩いてたんすよ。懐中電灯一個しか持っていかなかったんで、転びそうで怖かったっすねえ。
足元に気をつけながら、ちょっとずつ進んで行って…ほんの少し開けた場所に出たんす。
木の枝が少なかったんで、月明かりがそこにだけ射してました。

そこでの光景が、まあ気味悪かったんですよ。
木の幹一面に、藁人形が打ちつけてあったんす。

藁人形、知ってるっすよね?
その名の通り、藁で作った人形っす。丑の刻参りで使う奴っすね。
あれ、明るい所で見ればなんて事ないんすけど、夜中にあんな所で見るとかなり気味悪いっすよ。
俺たちも、うわあってなっちゃって。
ただ、何人かいるじゃないっすか。変な勇気が出ちゃうんすよね。
近寄ってみようってなって。

藁人形は全部釘で打ち付けてありました。
五寸釘っていうんすかね? アレっすよ。
試しに引き抜いてみようとしたんすけど、全然抜けないんすよ。
どんだけの力で打ち付けたんでしょうねえ。
それ以上することもないし、引き上げようってなったんす。
やっぱ気味悪かったし、もう帰ろうって。
…でもね、俺見ちゃったんすよ。

木の影から、俺達を見てる人がいたんっす。

一瞬、何かが月の光を反射したんすよ。キラってして。
暗いのにも目が慣れてたんで、そこに顔があるって気付いちゃったんっす。
俺、うわ、って声に出しちゃって。それが悪かったんだと思うっす。
その人、俺が気付いたのに気付いて、そこから飛び出そうとしたんすよ。
「走れ!」って咄嗟に叫びました。俺ももちろん走り出したっす。
皆わけがわからないながらも、俺のあとついて走り出しました。
その途中で、「うわあ」って声が聞こえました。
振り返る余裕はなかったんすけど、後で聞いたらそいつ、振り返って見ちゃったらしいんすよ。

髪を振り乱しながら走って来る、白い着物の人間を。

林の中をめちゃくちゃに走って、気付いたら神社の近くの自販機の前にいました。
全員息切らして、顔も真っ白でしたねえ。
特に、さっきのアレを見ちゃった奴は今にも泣きそうで。
やっぱりあれ、丑の刻参りだったんすかねえ。
だとしたら逃げ出したのは正解っすよね。
だって、丑の刻参りって見られたらいけないんすよね?
俺たちに見られたあの人は、きっと俺たちを消そうとしたに違いないっすよ。
怖いのは幽霊じゃなくて人間、ってよく言いますけど、本当っすよねえ。
いやあ、本当危ないところだったっす。


襲いかかってこられたら、うっかり殺しちゃいそうっすからね。
 
 
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